『 ごはん まだ〜〜〜? ― (3) ― 』
カタン ゴソゴソ ・・・・ ザ ザザザ
「 え〜〜と。 晩メシはぁ〜〜 酢豚 か 八宝菜 にするか〜
野菜、あるな〜 豚肉 足して ・・・
あ! タケノコの水煮、あるな〜〜 いれよ!
これ好きなんだよなあ〜〜 うん うん いいぞ〜 」
ジョーは 冷凍庫 から 冷蔵庫 そして 食糧庫と順にアタマをつっこみ
あれこれ 取りだした。
「 うん ・・・ 豚肉 あるから 酢豚 か〜〜〜
パイナップル あったかなあ? しっかし すばるだけだぞ アレ 食うの。
昔っから思うんだけど なんで アレ、酢豚に入れるのかね ・・・ 」
タマネギ ニンジン ピーマン シイタケ そして タケノコ なんかを
まな板に並べて さあ どれから切るかな・・・と思案していると。
ガタン −−− た だいま ぁ〜〜〜〜
玄関が開いて すぴかの声が響いてきた。
「 お ご帰還かあ〜 ん?? なんかちょっと・・? 」
ジョーは エプロンで手を拭いつつ ・・・ 玄関に向かった。
「 ・・・ は あ〜〜〜 た だいま ぁ 」
すぴかが玄関の上がり框に どっすん ・・腰を下ろしいる。
足元には でっか〜〜〜い部活バッグを保冷バッグ が転がっていた。
本人は だ〜〜〜 っと脚を伸ばしスニーカーも脱がずにぼんやりしている。
・・・ へえ ・・・・
いっつもの元気印、どうした?
疲れた〜〜〜 ってのとは
ちょっち 違うぞ?
ジョーは でもいつもと変わらない顔を娘に見せた。
「 お帰り すぴか。 ああ? どした 」
「 ・・・ ただいま ・・・ あ〜〜〜〜あ ・・・ 」
「 なんだ? 」
「 うん あの さ。 うん ・・・
・・・・ あ〜〜 なんかさ ・・・
めっちゃ甘いもん 食べたいなあ 激甘なのが。 」
「 へぇ〜〜 珍しいなあ すぴか 」
「 ・・ うん 自分でもびっくり
ねえ なんか ある? 晩御飯前だけど ・・・ 」
「 おし いいぞ〜〜 お父さんが作ってやる! 」
「 あのさ あまあ〜〜〜くして。
お母さんのシフォン・ケーキや カトル・カー は
美味しいけど 甘味 少ないんだ 」
「 任せとけって 」
「 マジ? 」
「 ああ。 まず 顔と手、洗ってこい 」
「 ん! あ そっこ〜〜でシャワってくるね 」
「 おう。 ウマイの、作っとく。
なに 飲む? アイス・コーヒーか 」
「 ・・・ ん〜〜 ・・・ あ オ・レ がいい。
お母さんが飲んでるめちゃ甘いやつ 」
「 りょう〜〜かい。 」
「 ん! ・・・ かそくそ〜〜〜〜ち!!! 」
すぴかは バス・ルームに消えた。
え。 な なんだ アイツ??
聞き捨てならない単語が聞こえた気がしたが ―
ジョーも < 加速そ〜ち > で 準備を始めた。
カチャカチャ ざ ざ ざ〜〜
・・・ じゅ〜〜〜〜〜〜
すぴかのお父さんは しばらくガス台の前でごそごそやっていたが
― やがて キッチン中に 香ばしい匂いが漂い始めた。
「 あ いいにおい〜〜〜〜〜 」
すぴかが 濡れた髪をタオルで拭き拭きしつつ戻ってきた。
「 さあ〜〜〜 できたぞ! 全部 食べろよ すぴか 」
ど どん。
テーブルの中央には 三段のホットケーキ ☆
天辺には バターがてんこ盛り そしてその下からは
だ〜〜〜〜〜っとシロップが滝みたいになって流れ落ち・・・
お皿の脇には バニラ・アイス が鎮座している。
「 ・・・ う わ 〜〜〜 おおう 」
「 どうぞ! ほれ フォークでちぎって食べていいぞ 」
「 う うん ・・・・ あ お箸 ある? 」
「 ほい 」
「 サンキュ いっただっきまあ〜〜す 」
きゅ。 むぐむぐむぐ きゅ ばくばくばく
すぴかは お箸でホット・ケーキを千切っては口に放り込み
千切っては放り込み ― 三段山 をたちまち崩してゆく。
「 ・・・ すげ〜〜 な〜〜 」
「 ん〜〜 むぐむぐ ・・・ え なに? 」
「 いや ・・・ すぴかがこんなに甘いモノ、食べるとこって
お父さん 初めてみたかもなあ 」
「 ・・・ アタシもそう思う ・・・ あは ・・・ 」
ことん。 すぴかはお箸を置いた。
ホット・ケーキの山 は 半分以下になっている。
「 ― なあ どした? 」
ジョーは 何気ない風に彼の娘に聞いた。
「 ボロ負け。 あ〜〜〜 もう 落ち込む〜〜〜 」
「 練習試合 か 」
「 ウン ・・・ いつものライバル・チーム となんだけど さ ・・・
ボロ負けした。 アタシの作戦ミスもあってさ 」
「 そうか ・・・ 」
「 皆はさ 島村のせいじゃないよ〜〜 って庇ってくれたけど
でも 根本的には ―
新人チームのキャプテンのアタシ、 見通しが甘かった んだ ・・・
「 うん そこまでもう分析 できたか 」
「 ― ん ・・・ 」
「 わかった。 すぴかが 今日やることは 終わってるな 」
「 ・・・ え そう? 」
「 ああ。 あとは ― 甘いもん 爆食いして 爆睡しろ。
明日になれば ― 新しい局面がみえてくる 」
「 え ・・・ ホント? 」
「 ああ。 本当さ。 今晩 くよくよしても 意味なし 」
「 ・・・ あ うん そっか・・・ そだね! 」
「 いいか。 今日の試合を思い出してベッドで輾転反側・・・
なんて 一番あほらしいことだからな 」
「 ・・・ そうなんだ? 」
「 そうさ。 今晩 終わったコトをくよくよして ― なにになる?
な〜〜んの解決にもならないぞ。
疲れ果ててる時に 発展的な思考ができると思うか? 」
「 ― できない 」
「 だろ? だ〜から。 今晩は ころっと爆睡 だ 」
「 ん。 わかった おと〜さん。
あは アタシ お腹いっぱいでさ 晩ご飯 ちょい無理かも 」
「 いいさ いいさ。 すぴかの分は冷凍しとく 」
「 ありがと〜〜 おと〜さん 」
「 アイスでも齧って 寝ろ。 」
「 ん。 そうするね お休みなさ〜〜い 」
「 ああ お休み すぴか。 激甘ホット・ケーキも なかなかいいだろ? 」
「 実は さ。 味 ・・・ あんま よくわかんなかった 」
「 ・・・ え ・・・ あ〜 そっか ・・・ 」
「 じゃ ね〜〜 おと〜さん。 えへ ・・・ サンキュ 」
「 おう 」
すぴかは 手をひらひら振って自分の部屋に引き上げていった。
「 ― あ 〜〜 ・・・ ムカシはさあ
おと〜さ〜〜〜ん ってすぐ抱き付いてきてくれたんだけど なあ
すぴか ・・・ 可愛いすぴか ・・・ 」
ジョーにとって すぴかはもう天から授かったタカラモノ なのだ。
「 ・・・ すぴかぁ 〜〜〜 ああ チビの頃って天使みたいだったなあ
すぴか ・・・ くるくる金色の巻き毛が可愛いくて・・・
ちっちゃな手で おと〜しゃ〜〜ん って抱き付いてきて ・・・ 」
バタン。 ただいま 〜〜〜
玄関のドアが ゆっくり閉まり落ち着いた声が聞こえた。
「 すばるか〜〜? お帰り ! 」
トン トン トン 軽くも重くもない足音が近づいてきた。
「 ただいま 〜 ん? なに 甘い匂い〜〜〜 」
「 すばる お帰り。 あ〜〜 ホット・ケーキ 作ったんだ。
食べるか? 」
「 おう! うわ なに これ。 ・・・・ シロップ漬けだあ 」
「 あ それ すぴかが残したヤツだから。
新しいの、焼いてやるぞ 」
「 あ いや〜〜 この シロップの湖(^^♪ 味見したい〜〜〜 」
「 ・・ へ え ・・・ いいけど な 」
「 へへへ〜〜〜 すぴか〜〜 もらうよぉ〜〜 」
すばるはお皿に残っていたホット・ケーキの 残骸 を一口 ―
「 ! うわ・・っ なんだ これ!? 」
「 ? あ〜 だからすぴかのリクエストで作った オヤツ さ 」
「 え すぴか これ 喰ったん? 」
「 ああ ばくばく食べたよ 」
「 うっそ〜〜〜〜 ねえ 父さん すぴか どっか悪いんじゃね?
これ ・・・ 激甘じゃん ・・・ 」
「 ― 負けたって 練習試合 」
「 ・・・ あ〜 バスケ部 ね〜〜 そ〜いや負けてたな
へえ それにしても ― ひえ〜〜〜 こんな甘いモンが
この世に存在するなんて(^^♪ だな〜〜〜
夢みた〜〜〜い (*^_^*) コレはなになのかな〜〜
」
「 パン・ケーキ さ 」
「 なあ 父さん〜〜 いや おと〜さま☆ 〜〜
これ オレにも作って〜〜 」
「 ダメだ。 身体に悪い 」
「 え〜〜 じゃあ なんですぴかは喰ってい〜んだよ〜〜 」
「 これは すぴかの < 薬 > さ。 」
「 くすり?? 」
「 そうさ。 ― 勝負にポロ負けして底まで落ち込んだ時の 薬 」
「 へ〜〜え〜〜〜〜 」
「 これは お母さんのレシピさ。 」
「 ひえ〜〜〜〜〜〜 母さんの ??? ひえ〜〜〜〜 」
「 そ。 昔 お父さんが底の底まで落ち込んでた時に
お母さんが作ってくれたんだ ・・・ 」
「 へ ええ・・・・・ はあ〜〜〜
父さん達ってさ〜 ほっんとに 甘々〜〜〜なんだねえ 」
「 ふん いいだろう〜〜???
お父さんには 甘々な思い出を共有する恋人がいるんだぞ〜〜 」
「 ・・・ コイビトって。 オレらの か〜さん じゃん?
結婚何年目さ? ・・・ っとに〜〜〜 」
「 あ 羨ましいんだろ〜〜 ? 」
「 ― ふん。 言っとくけど。
そのコイビトは オレらと血の繋がったヒトなんだぜ?
と〜さんとは 他人 だけどぉ〜〜〜 」
「 ・・・ コイツぅ〜〜〜 」
「 あ〜〜〜 腹減ったぁ〜〜〜 ごはん まだ? 」
「 ― 今から 作る 」
「 あ 食えるもん、頼むね〜〜 オレ 風呂 入ってくっからさ〜〜〜
今日は めちゃ疲れて 料理って気分じゃなくてさ〜〜〜
じゃね〜〜〜 ヨロシク〜〜 おと〜さまぁ♪ 」
すばるも 手をひらひら〜〜〜振ってキッチンを出ていった。
「 ! なんだよ アイツ〜〜〜〜〜
・・・ ふん。 フランは ぼくだけの コイビト なんだぞ 」
ふん! お前らに な〜〜にがわかるってんだ〜〜
宙に向かって悪態?を吐きつつ ジョーは野菜を切り始めた。
トントントン タタタタ ・・・・
ニンジン ピーマン シイタケ タマネギ 長ネギもついでに切って
あとは ニンニク 生姜。
おっと忘れてた、タケノコの水煮!
・・・ 色とりどりの山ができてゆく。
「 美味そうだなあ ・・・ふふふ〜〜ん♪
! 食えるモン 作ってね だと?? すばるのヤツ〜〜〜〜
ふん! 今日は パイナップル なしだ! 」
一人で < 思い出し怒り > をし 解凍できた豚肉の薄切りを切りわけ
調味料を合わせて さあて これから中華鍋で仕上げるか・・・と
ぴかぴかに磨き上げられている中華鍋を ガス台に置いた。
「 ・・・ あ〜 あの時 フランってばコレで
パンケーキ、作ってくれたんだよなあ ・・・ うん 」
ジョーの手は止まり ・・・・
視線はキッチンの窓から ― 遠いあの日に飛んでゆく。
― なんとかミッションを終結させ サイボーグ達は撤退した。
・・・ そう <撤退> だ。 凱旋ではなく 終了による引き上げ でもない。
そもそも初戦で ボロ負け。 なんとか立て直したが ・・・
怪我人が出なかったのが幸い、という有様でなんとか終結、
彼らは撤退したのだ。
バタン。 ゴッ −−−−−−− !!!
ジョーが殿 ( しんがり ) で ハッチからコクピットに飛び降りると
ほぼ同時に ドルフィン号は発進 − すぐに音速の壁を超えた。
メイン・パイロット席で赤毛が 眼を血走らせ操縦桿を握っている。
( ・・・ あ ・・・ さすが! ジェット ありがとう! )
ズ ・・・ カチャ !
鋼鉄の手がジョーを座席に引っ張り込みシートベルトで固定した。
( うわわ ・・・ あ〜〜 アルベルト・・・ ありがと )
ゴ −−−−−−−− !!!!
全員が Gを感じつつほっとしていた。
とにかく 今はドルフィン号に身を委ねていられる ・・・ 皆で。
「 ・・・っと。 自動操縦にチェンジ。 オレ 寝る 」
ジェットが さっさとコクピットを出ていった。
「 ― レスト・タイム。 損傷 ないな? 」
アルベルトは コンソール盤前から全員を見回した。
お〜〜 ああ 大丈夫だよ むう〜 ごはん 作りまっさ!
コクピット内の雰囲気は イッキに < いつもの >ものに変わった。
「 ・・・・・・ 」
ジョーは まだサブ・パイロット席に座り込んでいた。
視線はじっと計器類に向けられ 頭上のモニターでも今回のデータを
確認している ― が。
・・・ったく!
さ・・・・いていなヤツだな 009!
いや シマムラ・ジョー !!!
お前の見通しの甘さが原因で
全滅するところだったんだぞ??
有能で寛容な仲間達に土下座でもするんだな
・・・ って 通じないか ・・・
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 !!!
とにかく ぼくは最低なヤツだっ !!!
心の声は もうドルフィン号全体に大反響 ・・・ しているみたいだった。
もちろん 聞こえるのは順行しているエンジン音だけ だが。
彼の後ろ姿から 仲間たちはちゃんと彼の本音を聞きとり
彼のドツボ以下にふか〜〜〜〜く落ち込んでいる様子を理解していた。
― 気が付けば コクピットの中は無人だった。
009の 溜息だけが漂う重苦しい空間になっていた。
トントントン ふわ〜〜〜ん
軽い足音で甘い香りがやってきた。
「 ・・・・ ? 」
「 ジョー。 これ 食べて 」
「 ・・・ へ? 」
「 パンケーキ 焼いたの。 いま 食べて 」
「 あ ちょっと食欲なくて 」
「 食べて。 とにかく 食べて。 ココで 」
「 ・・・え あ うん 」
フランソワーズは フォークを彼の手に握らせると
まだ湯気の漂うお皿を 押し付けた。
「 食べて 」
「 ・・・ ん ・・・ 」
きゅ。 フォークで千切って口に押し込む。
「 ! ・・・ う わぁ 甘あ〜〜〜 」
目を白黒させたが ジョーはその一口をしっかりと呑み込んだ。
「 ん ・・・ あ おいしい よ 」
「 うふふ そう? ねえ 全部たべて。
バターとシロップをいっぱい掛けたパン・ケーキ、好きって
言ってたでしょう? ほら コドモの頃、憧れてたって 」
「 ・・・ あ そう だったかな 」
「 ちゃんと覚えているわよ わたし。 」
「 そっか ・・・ うん 美味しいよ 」
「 よかったわ 今ね 大人にお願いして
大急ぎで厨房を使わせてもらったの。 」
「 ・・・ そっか ありがとう ・・・
ごちそうさまでした。 美味しかったです。 」
ジョーは カラになった皿をそっとコンソール盤の端に置いた。
「 全部食べた? そしたらね しばらく眠って。
ほ〜〜ら アナタは 眠くなあ〜〜るぅ〜〜〜〜 」
フランソワーズは 彼の目の前で手をひらひら 揺らす。
「 ・・・え それって なに 」
「 ほ〜〜ら 眠くなあ〜る〜〜 って催眠術よ〜〜〜 」
「 え ・・・ あ でもちょっと眠い かな 」
「 でしょ? ほらほら キャビンで寝てきて。
お家に着いたら ちゃんと起こしてあげます 」
「 いや でも 今回の検証と反省を ― 」
ノン。 ― 彼女はきっぱりと言った。
「 へ? 」
「 いい ジョー? 」
彼女は 彼の正面に周り じっと顔を見つめた。
「 あのね。 落ち込んだ時は 甘あ〜〜いモノ、食べて 寝るの。
明日になれば 新しい局面が見えるわ。 」
「 え ・・・ 」
「 とにかく わたし達、皆 無事なの!
さあ 寝て 009。 そして 明日からまた前を向くの 」
碧い瞳が チカラ強くジョーの背を押している。
「 ― わかった。 ・・・ありがとう フランソワーズ! 」
「 うふふ どういたしまして。
お家に帰ったら 美味し〜〜〜いケーキ・ショップ 付き合ってね? 」
「 喜んで〜〜 ホント ありがと ・・・ 」
ジョーは おずおずと彼女に向かって手を差し出した。
きゅ。 白い手がしっかりと握りかえす。
「 ・・・ お休み なさい 」
「 おやすみなさい ジョー。 」
― そう あの時 ジョーははっきりと心に刻みつけた。
彼女が 好きだ !
そして ≪ 落ち込んだ時には 激甘いモノ と 爆睡 ≫ と。
ジャ −−−− !!!!
中華鍋の中で 野菜たちが踊り始めた。
「 ふんふん〜〜〜 いいぞぉ〜〜〜 ってここに肉を 」
「 すと〜〜っぷ。 」
「 おわ!?!? な なんだ〜〜 」
突然 ジョーの菜箸を持つ手が 押さえられた。
「 す すばる?? いいきなりなんだ〜〜
炒めもの、してるんだぞ 危ない ! 」
「 だ〜から。 オレに菜箸 貸して。 」
「 疲れて 料理気分じゃない って言ってたのは誰だあ? 」
「 ま いいじゃん もらうよ、菜箸。 」
すばるは 父親の手から菜箸をとりあげると さささ ・・っと
野菜類を片寄せた。
「 あ〜〜 でっかい皿 もってきて 」
「 あ うん ・・・ これでいいかい 」
「 あ〜。 あのね 野菜と肉を一緒にするのはラスト。
ざっと火が通ったら野菜類は ざざっと引き上げて。
次に そこに肉投入だよ。
うん 薄切り肉だから 広げてさささっと片栗粉 まぶして。
野菜のうま味を ず〜〜んと肉に吸わせるんだ 」
「 あ ふう〜〜〜ん なるほど ・・・ 」
「 で〜〜〜 ちゃっと肉に火 通して。 」
「 ・・・お いい匂いじゃんか 」
「 だろ〜 ? やあ 火、通ったかな〜〜〜
そんじゃ あ 調味料と片栗粉は溶いてある? 」
「 おう。 これだ 」
「 サンキュ ・・・ これにな〜〜 顆粒中華出汁 をちょいと足して
イッキに投入〜〜〜 全員まぜまぜまぜ〜〜〜〜 」
「 あ〜ここにいれるんだ? 」
「 そ。 そんでもって。 味見・・・ ん 〜〜〜んま!
ざ ざ ざ ざ 〜〜〜〜 っと ほら とろみもついて
できあがり ♪ 」
トン。 すばるは 中華鍋を ガス台の上、布巾の上に置いた。
「 ふ〜〜〜〜 いいにおい だなあ〜〜〜 」
「 さ。 メシにしようぜ すぴかは? 」
「 あ 寝てる。 爆睡してる 寝かせておいてやれよ 」
「 へえ 〜〜〜 じゃ と〜さんと二人飯 するか 」
「 御飯と味噌汁、よそっておくから。
すばる、髪、ちゃんと拭いてこいよ? まだ濡れてるぞ 」
「 お〜〜っとぉ ・・・ へいへい 」
すばるは タオルを取りに駆けていった。
「「 いっただっきま〜〜す 」」
広いテーブルに 二人で向き合って に〜〜〜っと笑った。
むぐむぐむぐ〜〜 ばくばくばく〜〜〜
「 ウマイなあ〜〜 うん! なあ すばる? 」
「 ふぁ ふぁ ・・・ 熱々〜〜 でいいね! 」
息子と二人だけで食べる 晩ご飯 ― なかなかいい感じ。
ジョーは じ〜〜んわりお腹の底から温かい気分になってきた。
「 ! と〜さん! なんで パイナップル 入ってね〜の〜〜?? 」
― これが すばるの感想でした。
さて 数日後 ・・・
ガッタン ― 玄関のドアが重く開いた。
「 あ? お帰り〜〜 すばる か? 」
ジョーは キッチンから声をかけた。
「 ん 〜〜 ・・・ただいま ・・・ 」
どたん どたん ジョーの息子がゆっくりとキッチンに顔をだす。
「 ・・・ と〜さん ごはん まだ・・・? 」
「 あ? どうした? 」
「 ・・・ べつに ・・・ あ うん ちょっと疲れたかな 〜〜 」
「 ま 中坊は忙しいからなあ すぴかは? 」
「 すぴかはさ 次代キャプテン だからさ〜 部活! 」
「 あ そうだったな それじゃ 晩飯 なにがいい? 」
「 あれ? か〜さん 今日 帰ってくんだよね? 」
「 夜な。 遅いはずだよ 」
「 ・・・ そっか あれ じ〜さまもだよね? 」
「 うん 空港から車 頼むって。 迎えにゆきますっていったのに 」
「 ふうん 」
「 お前たちに 迷惑をかけるな ってさ 」
「 だはは じ〜さま わかってるぅ〜〜 」
ただいまあ〜〜〜〜 お腹 すいたぁ〜〜〜〜〜
玄関で いつもの・すぴかの声 が聞こえてきた。
「 お 腹ペコ嬢がお帰りか〜〜 」
「 オレも〜〜〜 オレも腹ペコ〜〜〜 」
「 よ〜し 待ってろ。 今晩はお父さんのぼりゅーむメシ だ! 」
ジョーの ぼりゅ〜むごはん とは ― 三色丼
山ほどの 鶏肉のソボロ 炒り卵 そして 茹でシラス。
これが こ〜〜〜んもり丼御飯に盛り上がっている。
鶏ソボロの上には紅生姜 炒り卵は甘く シラスはさっと茹でて塩・コショウにオリーブオイル。
それぞれ違う味がひしめきあっているのだ。
「 うわ〜〜〜 すっご〜〜〜 」
「 だっぴゃ〜〜 うまそ〜〜〜 」
「 こらこら。 食事の前は ― 」
「 へいへい みなさん 背筋をのばしてください。 手を合わせましょう 」
「「 は〜い 給食委員さん 」」
「 で〜は かんしゃのここをこめて いただきます ! 」
「「 ! ・・・うっま〜〜〜〜〜!!! 」 」
絶賛の声がひびき その後しばらくは静謐となった。
( 島村さんち の人々は 咀嚼の音などたてない! )
「 ・・・ これ さ ウマすぎ〜〜〜〜 おと〜さん 」
「 うぴゃ〜〜 炒り卵 甘くてさいこ〜〜〜 と〜さん 」
「 ふふふ そっか そっか〜〜 」
中学生のムスメとムスコに大絶賛を浴び
( 彼らは 晩ご飯 を絶賛したのだけれど )
ジョーは に〜〜〜んまり・・・ 鼻 高々〜〜 だ。
「 あら?? なになに???
わたしも食べたいわあ〜〜〜〜〜 」
突然 食卓に ぱあ〜〜〜っと明るい声が響いた。
「 !? あれ フラン〜〜〜〜 ?? 」
「 あ お母さん?? お帰り〜〜 」
「 あれ?? 早いね 」
「 やれ ただいま おお いい匂いじゃなあ〜〜 」
「「 おじいちゃま〜〜〜 お帰りなさい !! 」」
チビ達は 箸を放りだし 博士の側にとんでいった。
「 荷物〜〜 かして! 」
「 おじいちゃま〜〜 ごはんにする? お風呂がさき? 」
「 ― ありがとよ まあ まず 顔と手を洗ってくるか 」
「 それがいいよ 」
すばるは ぱたぱた・・・ 博士についていった。
「 おじ〜ちゃま〜〜 熱いお茶 淹れておくね〜〜 」
すぴかが お茶の支度を始めた。
「 フラン〜〜〜 嬉しいな こんなに早く〜〜 」
ジョーは もう細君の側にぺったりだ。
「 ふふふ・・・ 博士がね 空港で待っててくださって。
一緒にクルマで帰ってきたの〜〜〜 」
「 ふぉ ふぉ ふぉ ・・・
あのマダムに連絡して移動公演の詳しい予定を伺ってな。
ワシの帰国の便とあまりかわらん時間じゃったので な〜〜 」
「 あ それで こんなに早く帰ってこれたんだね 」
「 そうなの〜〜 あ〜〜〜 お腹へったぁ〜〜
ねえ その美味しそうなご飯 わたしも食べたい〜〜〜 」
「 ああ ワシも頂きたいぞ 」
「 よっしゃあ〜〜〜 」
― 三色丼 は 大好評。 炊飯器はほぼ空になった。
「 おか〜さ〜〜ん ごはん まだ〜〜〜 ? 」
「 ごはん まだ〜〜〜? おと〜さん 」
― それは 島村さんち の幸せの音 ・・・
********************* Fin.
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Last updated : 05.23.2023.
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************* ひと言 ************
例によってなんてことないハナシでした <m(__)m>
ジョー君の 幸せの記録 ・・・ かな ☆